NTM Concept
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音楽で、まちに居場所を。
NTMの設立理念(大事にしているコンセプト)は次の3つです:
1. 参加と鑑賞のあいだを、ひらく──音楽を媒介として、公共空間に人びとの《居場所》を創ること
2. そこに生まれる《ゆるやかな繋がり》を通じて、地域のソーシャル・キャピタル(社会関係資本)を育むこと
3. その積み重ねによって、地域社会のコンヴィヴィアリティ(自律共生)を培い、ウェルビーイング(持続的幸福)を高めること
NTMの地域音楽イベントは、ストリートピアノ、オープンマイク、LIVE、コンサートなど、参加型と鑑賞型を組み合わせることが多くなってきています。以下ではテーマ名であるNTMに加えて、サブテーマであるNTPPについても説明します。
1. NTM
NTM - North Tokyo Musicking(エヌティーエム)は、ノーストーキョーから文化芸術の新しい風を吹かせる音楽まちづくりプロジェクト。 「音楽で、まちに居場所を。」を合言葉にストリートピアノやコンサート/LIVEなど、主にピアノ関連の参加型音楽イベントをプロデュースしています。出演者は赤羽ストリートピアノや寺ピアノなど、スクエアゼット(square_az)が企画運営・協力・参加する数々のストリートピアノイベントで出会った腕利きのピアニストやアーティストを中心としています。NTMはストリートピアノから生まれた音楽ライブ企画ともいえますし、ストリートピアノのイベントをNTM名義で行うこともあります。つまりNTMは、ストリートピアノや音楽LIVEを束ねる概念です。
NTMの「NT」は、次のような意味を込めています。
North Tokyo 東京北側
New Tokyo / Neo Tokyo 新東京
New Type 新しいタイプ
NarraTive ナラティブ(語り:語り手自身が主人公となる終わりのない物語)
Neighborhood Taking-part-in 近隣参加
New Third-place 新しいサードプレイス
Networking Third-places  サードプレイス・ネットワーク
NTMの「M」は、次のような意味を込めています。
Musicking ミュージッキング
Music 音楽
Machizukuri まちづくり
Monogatari 物語
Manabi 学び
Meaning 意味
Meeting 会
Method 方法
Model モデル
Movement ムーブメント
この節では、以下の流れで冒頭にあげたコンセプトを解説します。
1.1 ミュージッキング
1.2 地域でアーティストを育てる
1.3 音楽が人を繋げる
1.4 参加と鑑賞のあいだを拓く
1.5 音楽を通じたサードプレイス連携
1.6 ソーシャルキャピタルとコンヴィヴィアリティ
1.7 ナラティブとノーストーキョー
1.1 ミュージッキング
ミュージッキング(Musicking)とは、音楽を単なる鑑賞の対象としてだけでなく、関連する諸々の行為や活動として捉える概念です。具体的には、演奏、歌唱、ダンス、聴取、LIVE企画、楽器運搬・設置・会場準備・撤収・清掃、さらには音楽を介して集まった人びとによる会話やコミュニケーションなど、音楽に関わる行為全般を指します。この概念は、クリストファー・スモールによって提唱されましたが、音楽を譜面や音源のようなモノではなくコト、すなわち人びとの行為や活動として捉える点で、従来の音楽観とは異なります。NTMではミュージッキングを音楽まちづくりと概念的に重なるものとして捉えています。そこでまずは音楽まちづくりとミュージッキングの関係について説明します。
もし音楽が本質的に楽譜や音源のようなモノ的なモノだとすれば、それは人間とは関係なく存在するということです。しかしミュージッキングをふまえ音楽が本質的に演奏活動だとすれば、それは生きている人間の行為であり、直接人間に関係するものということになります。音楽まちづくりにおいては、音楽そのものというよりは音楽がいかにして人を繋げていくのか、またそれがどのように地域を変えていくのかに関心があります。ミュージキングでは演奏が中心であり、演奏者も聴き手も、自分たちが他者や世界とどう関わるべきかという「理想的な関係性」をその場で体験し、構築しているとスモールは考えます。スモールにとっては「音楽をすること(ミュージッキング)」そのものが、人間同士のふさわしい関係性を確認しあう対話のようなプロセスなのです。それはあえていえば、音楽(演奏)とは、自然言語での対話ではなく、音楽言語での対話であり、人びとの関係を音楽によってかたちづくっていくプロセスなのです。これは音楽によって人を繋げ、コミュニティを作っていくNTMのコンセプトと高いレベルで響きあうといえるでしょう。そこでNTMのMは、Musickingを主に意味するものと定めました。
上述したようにNTMの「M」には、Musicking、Music、Meeting、Monogatari、Manabi、Meaning、Method、Movement、Modelといった意味があるのですが、音楽の意味を残しながら、他の概念とも近しいのは、Musickingといえるでしょう。したがって、NTMをあえて一義的にいうならば、"North Tokyo Musicking"(ノーストーキョー・ミュージッキング)と表現することになります。
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1.2 地域でアーティストを育てる
音楽まちづくりというと、立派なホールなどを作って有名なアーティストを招くというイメージがありますが、このようなやり方は時代遅れと言わざるをえません。日本全国には立派なホールが既にたくさんあるのでハコモノを作る必要はほぼないのです。それに有名なアーティストを呼んできてLIVEをしても、盛り上がりはその場限りです。それに極論してしまえば、まちが文化を生み出したというよりはアーティストとその関連の芸能事務所やイベント業者らが、全国各地のツアーを組んで横展開的にコピーしているだけなのです。どこでやっても同じなので、金太郎飴のような商品を工場で大量生産させるようなものです。場合によっては音源を流して口パクで終わるような同じことの繰り返しをしているわけです。もちろん新しいファンを獲得するためには繰り返しを厭わない姿勢も必要ですが、繰り返しというのは、本質的には文化的な差異をもたらさないのでほとんど意味がありません。
逆にいえば、音楽まちづくりというのは、地域からアーティストと聴き手の両方を育てていくことが基本であるべきです。もちろん、そういった地域のアーティストを育てるための肥やしになるので、有名なアーティストにLIVEをしてもらうことが無意味なわけではありません。しかしながら、基本的にはまだあまり知られていない無名のアーティストを起用して、聴き手とファンをともに増やしていくという地道な努力の積み重ねが、地域から音楽文化を醸成するということです。これは音楽まちづくりの王道ですが、時間がかかります。もっとも、まちづくりというのは少なくとも数年、普通は数十年、場合によっては数百年といった中長期的なプロジェクトです。再開発などの都市計画が数年とか10年以上に及ぶことはよく知られていますが、ハード面だけでなくソフト面でのまちづくりもそれなりに時間がかかるものなのです。何世代にもわたることで、まちづくりのソフト面すなわち文化は形づくられていきます。
ただ地域からアーティストを育てていくといっても、子供たちを20年以上かけてアーティストにしていくというやり方だけではありません。まだ無名の若者や大人のアーティストに住んでもらって、そこから作品や演奏文化を生み出してもらうというやり方なら数年レベルで成果も出せるでしょう。これはアーティスト・インレジデンスという方法です。NTMじたいはこのようなレジデンスつまり住居を運営してはいませんが、シェアハウスとは繋がりがあり、将来的にはアーティスト・インレジデンスを走らせていければと考えています。
1.3 音楽が人を繋げる
地域でアーティストを育てていったり、無名のアーティストを呼んできたり、ということは音楽まちづくりの一つの有力なやり方ですが、それだけではまだある意味では音楽が音楽で自己完結してしまっています。音楽まちづくりにおいては、音楽が人と人を繋げていく、ということに力点が置かれます。これはある意味では音楽の音楽外的な力です。たとえばストリートピアノは、街中でピアノ演奏がなされるため、ふだんはコンサートやLIVEに行かない人に聴かせることができます。LIVEをする奏者(アーティスト)なら、ストリートピアノで聴いてくれた人とその場で話したりすることで、その後、自分のLIVEに来てくれるかもしれません。また、ふだんはLIVEに行かない人でもはじめてそういったインディーズ的な演奏活動をしている人の小規模LIVEに行くことになるかもしれません。このように、ストリートピアノの偶然の出会いが、アーティストのファン獲得や音楽市場の裾野の拡大に繋がります。
つぎに、ストリートピアノやストリートLIVEなどでは、まちを散歩しているお年寄りの方々や車椅子の方々が聴いてくれることがしばしばあります。ふだんライブハウスなどの会場にはなかなか行けない人びとが聴くというだけでなく、ここでは世代を超えた多世代交流や、障害の有無を超えた交流があります(音楽は言語も超えるので外国人との国際交流もあります)。演奏が終わるとお年寄りや車椅子の方々が拍手をするということだけでもよいのですが、演奏後に軽く会話をすることで、音楽を通じた交流がはじまります。このような交流はストリートピアノやストリートLIVEなどの演奏行為が、演奏者と聴き手という《役割をセットでその場において生成させるからこそ可能になっています。演奏による《役割生成》という観点は重要です。また、このような役割は、ストリートピアノにおいてはさらに交換可能であり、お年寄りがピアノを弾いたり、ハーモニカなどの楽器を鳴らしたりすることもあります。役割の交換までいかなくても、演奏がなかったら通行人にすぎなかった人びとが、演奏が生成する役割を獲得することで、その場に《 居場所》を見出し、居心地よく留まり、人間的な交流が可能になるのです。
ところで音楽そのものの革新性といったものも音楽や文化にとっては重要ですが、それは音大、前衛音楽、ジャズ、クラブカルチャーといったいわば専門家たちのコミュニティにおいてやるべきことです。音大、ジャズクラブ、ライブハウス、クラブといった音楽関係施設を地域に設置するといったことはたしかに自治体レベルの音楽まちづくりや都市計画では重要になるかもしれません。しかしながら、そういった大規模な都市計画は誰もが個人として関われるようなムーヴメントにはなかなかなりませんし、既にそういった音楽施設は、たとえば東京なら西側に偏在しており、なかなかハード面を動かすことは難しいでしょう。それに特に音大や著名な音楽施設は、すでに青山のブルーノートや六本木のサントリーホール、下北沢や高円寺のライブハウスなど、すでに有名な「音楽の本場」としてオーセンティシティ(本物性)をもつ地域ブランドとなっており、別の地域がそれを後発で真似することはかなり難しい話です。
後発地域での音楽まちづくりでできることは、音楽そのものの革新というよりは、上述したように音楽が人を繋げることや、音楽と音楽以外のものとの結びつきで勝負したほうがよいように思います。音楽の本場には、そのブランド力により、優れたアーティストが集まり、そこでの競争や相互作用、化学反応などによってさらに優れたもの、新しいものが出てきやすいので、音楽そのものだけでは、どうしても本場とは分がないのです。それよりは、音楽と音楽ならざるものを繋げることで、新しい文化が創発することに私としては賭けてみたい。私(スクエアゼット)自身が手がけたものとしては、赤羽ストリートピアノ、寺ピアノ、餃子ストリートピアノなどがありますが、商店街とピアノ、寺とピアノ、餃子とピアノといったように、異質なものを組み合わせることで新しい文化が生まれるのです。つまりNTMの音楽まちづくりは、音楽を含めた《文化的まちづくり》を志向しているわけです。
1.4 参加と鑑賞のあいだを拓く
特にストリートピアノでは音楽における鑑賞ではなく演奏参加というものに力点があります。これはこれまでの音楽文化がアーティストの排出ということにこだわっていたことと全く違う視点になります。アーティストの排出というのはあくまで音楽を聴く側からの音楽鑑賞という評価が中心なのですが、ストリートピアノやオープンマイク、そしてカラオケなどは、聴く側よりも、演奏側に力点があるのです。この《ミュージッキング》の発想は選ばれたエリートのみが演奏者であるべきという発想とは根本的に相容れません。演奏の参加性を重視するやり方というのは、上述したように優れたアーティストを集めてその卓越性をさらに高めるという発想とは全く異なり、どこでもできるようなやり方なのです。
しかし誰もが演奏に参加できるというなら、演奏の質や鑑賞性は犠牲にならざるをえないのでしょうか。もちろん、ある程度はそうなります。しかしながらショパンコンクールのような上手い演奏ばかりを聴いていたら緊張で疲れてしまわないでしょうか。ストリートピアノのように、上手い下手が混在するような場も、意外と楽しかったりするのです。たしかにストリートピアノでは下手な演奏が続くこともあるかもしれません。しかしながら経験的にすくなくとも東京でのストリートピアノ・イベントではセミプロのような演奏が多く、むしろビギナーが恐縮してしまって弾きにくいという別種の課題が出てくるほど、演奏のレベルは高いのです。もっとも最近ではストリートピアノイベントも多くの場所で催されるようになってきているので、ゲスト演奏者にミニLIVEをしてもらうことで、ある程度、鑑賞レベルの保証をしつつ、ゲスト演奏者のファンをよぶことで賑わいを作り出す手法をとるようになってきています。とはいえ、ストリートピアノは上手い下手は関係なく、参加することに最大の意義があります。コンサートやコンクールのような場だけが、音楽の場ではないということです。なお、弾き語りアーティストの歌なども上手い下手という軸とはまた別の軸での価値があります。
以上の議論は、演奏参加と音楽鑑賞の「あいだ」をめぐる実践的な思考といえます。ここでは音楽を通じた人と人の役割に焦点をあてていましたが、つぎに音楽のある場所と場所の関係性を考えます。
1.5 音楽を通じたサードプレイス連携
NTMの活動は、音楽関係なので普通に考えれば、NTMは North Tokyo Music や New Tokyo Musicですが、上記にみたようにミュージッキングの概念に拠って、North Tokyo Musicking や New Tokyo Musicking というコンセプトを得ることができます。ただNTMは音楽だけでなくより広いコンテクストを視野に入れた New Type Method(新手法)や New Type Movement (新しいムーブメント)のような物事一般や地域社会の課題に対する新しいアプローチ、社会実験であることも含意しています。具体的にいえば、ストリートピアノだけでなく「ピアノスナック」(ピアノバーとは異なり誰でもピアノが弾ける飲食店)や「ピアノシェアハウス」(アーティストインレジデンス)のように、NTMはピアノのあるサードプレイスを地域に増やしています。これは新しい形での集まり(New Type Meeting) として「ストリートピアノのその先」を切り拓く音楽まちづくり活動の一環です。なおサードプレイスとは、家というファーストプレイス(第一の居場所)、職場や学校というセカンドプレイス(第二の居場所)の次にくる第三の居場所です。サードプレイスは社会学者のレイ・オルテンバーグが提唱しましたが、じつは彼自身は音楽に対しては会話を邪魔するということで、サードプレイスに対する音楽の役割を認めていません。私はこの点は稿を改めて明確に批判したいと思っています。むしろ音楽が人を繋げることは私の経験的にも、スモールのMusickingの理論的にも明らかだからです。
NTMは上述したピアノスナックやピアノシェアハウスに加えて、既存のピアノカフェやピアノのあるライブハウス、ライブカフェなども含めた「ピアノサードプレイス」(ピアノプレイス)や「音楽サードプレイス」(Musicking Third-place)の連携を促し、人びとの交流が活性化していくことをねらっています。無縁社会とよばれて久しい昨今、このようにしてNTMはピアノや音楽を通じた縁とコミュニティを醸成し、地域に根づきつつ文化芸術を発展させていく「文化的まちづくり」の新手法(New Type Method)あるいは新サードプレイスモデル(New Third-place Model)を編み出そうとしています。この《サードプレイス連携》は、音楽(ミュージッキング)によってサードプレイスを繋げるので、”Networking Third-place on Musicking” ともいえるでしょう。これはひとつの《音楽サードプレイス》をつくるだけでなく、音楽によるサードプレイス連携です。プレイスが複数あることによってフォーカスがあたるのは、その様々なプレイスを訪れる人びとのほうであり、その人びとは繋がりを通じて様々なプレイスを楽しみます。したがって《音楽サードプレイス連携》は、音楽とサードプレイスを用いたコミュニティ形成であり、その設計は《コミュニティ・デザイン》ということになります。これは各サードプレイス側からみれば、サードプレイス間の共生的関係になるので、「音楽サードプレイス・エコシステム」(Musicking Third-place Ecosystem)とよぶことができるでしょう。
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パブリックプレイスとセミパブリックなサードプレイスを繋ぐサードプレイス連携・共生をミュージッキングによって促進
各サードプレイスだけでなく、いわば各サードプレイス間の交流を活性化するセンター的なサードプレイスとして公共的なサードプレイス、すなわち《パブリック・プレイス》が考えられます。じつは赤羽ストリートピアノやソラのマルシェなど、広場や公園やストリートなどさまざまな公共の場所での屋外イベントは、このような公共の居場所すなわちパブリックプレイスの役割を果たします。またパブリックスペースを公共的な居場所であるパブリックプレイスに作り変えるプレイスメイキングは、主に建築系や都市開発の文脈で、近年、注目を集めている考え方であり、国土交通省でも検討されています。また、プレイスメイキングは国の住宅行政を担うUR都市機構でも研究されています。
音楽によるサードプレイス連携や音楽サードプレイス・エコシステムは、プレイスメイキングによってつくられるパブリックプレイスとしてのストリートピアノやマルシェが含まれていることによって、アンダーグランドを超え出る公共的な活動になっていきます。音楽は音が出るため、ライブハウスやクラブなどをみればわかるように、たいていは地下の人目がつかない会場で音楽イベントが営まれているのが常態ですが、フェスやマルシェLIVEなどでは多くの人びとに見聞きされることになります。このように性質が異なるクローズドないしセミパブリックなサードプレイスと、ストリートピアノ、マルシェなどの無料の公共的なイベント(パブリックプレイス)が連動することで、サードプレイス間の交流や、それらじたいに新しい人びとが流入する回路がつくられ、地域コミュニティが全体として活性化し、コンヴィヴィアルなものになっていきます。
1.6 ソーシャルキャピタルとコンヴィヴィアリティ
建築系のムーヴメントであるリノベーションまちづくりやプレイスメイキングは、ともすれば1つの場所やエリアにとらわれがちですが、都市や地域社会全体からみれば、複数の場所のネットワーキングが重要です。というのは、互いに繋がっている人びとの集まりがメンバーを少しずつ変えながら複数の場所をイベントごとに訪れているのが実情だからです。1つ1つの場所やイベントはもちろん大事なのですが、より重要なのは、それら様々な場所を変えても形成される人びとの繋がりそのものであり、これがコミュニティとかソーシャル・キャピタル(社会関係資本)とよばれるものです。ソーシャル・キャピタルによって様々なイベントは再び実現できますし、そういったイベントによってソーシャル・キャピタルはますます豊かになっていきます。これが心の豊かさのような、人びとのウェルビーイングを高めるのです。
ただし信頼と支え合いを旨とするソーシャル・キャピタルだけではウェルビーイングにとっては十分ではありません。そこには他者や技術的なシステムへの依存や支配などが入り込む余地があるため、互いに自律的かつ孤立しあわず相互に支えあうというコンヴィヴィアリティの理念が必要です。特にコンヴィヴィアリティにおいては、モノ・システム・技術といった非人間的な要素が入ってきます。とくにNTMにおいては、ピアノなどの楽器と音楽、飲食、場所といった人びとを繋げる媒介物(メディア)がコンヴィヴィアリティに関係するわけです。なお、社会や都市全体としては、複数の場所と複数のコミュニティが日々マッチングしているのが社会の営みです。これは様々な飲食店、公園、ホールなどが様々な集まりで利用されていることがよい例でしょう。
1.7 ナラティブとノーストーキョー
ところで、NTMの「M」についてはMusickingでしたが、一方の「NT」について考えていきます。現在進行形として、音楽イベントや様々なサードプレイスを通じて地域内外の様々なアクターが結びつきつつあります。それぞれのアクターに自己物語(NarraTiveナラティブ、語り)があり、それらが結びついて地域の物語となりつつあります。NTMはそのような新たな物語を地域の人びとと共に紡ぎつつ、自らその意味について語っていき、また新たな気づきとともに語り直していきます。この言語化と語り直しの試み、ナラティブ=自己物語は、音楽や地域に紐づいた私たち自身のアイデンティティにも関わっています。このようにNTMはインスト音楽にも物語性を込めるとともに、アーティストと地域内外の人びとが地域社会に参加・参画し、共に紡ぐ街の物語や語りを大切にしています。たとえば、このページもその実践のひとつですし、SNSの積極的な活用もその一環です。
その時その場所での出来事にすぎず、時間が経てば忘れ去られていきかねないイベントを、語りは記録し、記憶にとどめ、人びとに伝えていく機能があります。イベントは時間的にも空間的(社会的)にも限られていますが、それをより多くの人びとに伝え、そして末長く後世に残していくために語ること、言語化することは重要です。語りがなければ、イベントは忘れられ、事実上なかったことになってしまいます。NTMはひとつのイベントを1イベントに終わらせるのではなく、それを語り、さらにこのような形で文字にして言語化することで、数々のイベントを蓄積してゆく地域の文化へと醸成します。ここでの地域は一地域ではなく、東京都と埼玉県の多くの区市町村にまたがる広域としてのノーストーキョーであり、この広いエリアにいきわたるシンボルとしての新たな文化的アイデンティティの構築を目指しています。このアイデンティティや文化のためにもナラティブという言語化は必須のものなのです。
ノーストーキョーは具体的にいえば、北区、荒川区、板橋区、足立区、豊島区などの城北エリア、川口市、蕨市、戸田市、さいたま市などの埼玉南部エリアをまとめたものとNTMでは定義しています。したがってノーストーキョーの境界は曖昧で、都心からみて北のほう、東京北側というくらいです。ノーストーキョーはレッズとアルディージャを有すさいたま市のサッカー文化を除くと、これといって何かあるわけでもない住宅街が広がっています。サッカー文化があったり、氷川神社や盆栽村など江戸時代の文化を今に伝えるさいたま市に比べ、23区ではあるものの城北エリアはより顔が見えない街かもしれません。ただし上記の自治体のうち副都心である池袋を有す豊島区は、まちづくりにおける先進地域であり、SDGs的取組みでも有名です。南池袋公園を筆頭とする公民連携を駆使した公園主導型まちづくりなど様々な成果を既に実現しています。まちづくりのお手本であり、そもそもノーストーキョーという言葉じたいも豊島区の新しいまちづくりアクターたちから出てきたものといわれています。私自身は豊島区に多くを学びながら、豊島区に隣接しながらも23区で最も文化的に停滞し、新しいものをほとんど生み出してこなかった北区にこそ最大の伸びしろを感じています。じっさい赤羽、王子、十条といった魅力的な街がありながらも、飲み屋カルチャー以外を生み出してこなかった北区は区長が若返ったのを境に、公民連携が活性化し、王子の飛鳥山公園を中心として盛り上がりをみせはじめています。
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2. NTPP
つぎにNTPP(エヌティーピーピー)、NTは上述したとおりなので、主に"PP"というコンセプトについて。NTMを明示した最初の大きなイベントは、2023年に開催した「ノーストーキョー・ピアノパーティ」(NTPP - North Tokyo Piano Party)でした。 そこでNTMは、NTMntppというアカウント名で、X(twitter)などSNS(https://x.com/NTMntpp )を展開しています。
NTPPの"PP"は(square p あるいはdouble p)、次のような意味を込めています。
Public Piano 公共ピアノ
Piano Party ピアノパーティ
Piano Place ピアノプレイス
Piano Placemaking ピアノプレイスメイキング
Piano Project ピアノプロジェクト
Participative Piano 参加型ピアノ
Polychrome Piano 多彩なピアノ
Piano Possibility ピアノの可能性
Piano Power ピアノの力
Pianist Power ピアニストの力
Public Place パブリックプレイス(公共広場)
Public Project 公共プロジェクト
Public Partnership 公共的相互関係
NTMの源流には、ピアノ教室の生徒を中心メンバーとするクローズドなピアノパーティ「リベラメンテ」(Liberamente)があります。NTMで展開しているストリートピアノ・イベントは、このピアノパーティをオープンな形にしたものとも位置づけています。またピアノパーティ的なものとしては、上記のノーストキョー・ピアノパーティのほか、2022年~2023年に開催された「テラピスト」(Terapist)や、2025年よりはじまった餃子会と共催する「ヌーヴェル赤羽台ストリートピアノ」(Nouvelle Akabanedai Street Piano)があげられます。いずれも飲食付きのオープン・ピアノとなっています。また、街中スナックにおける「街中ミュージック」(Machinaka Music)も、30分の投げ銭LIVE後は、ピアノが開放され、誰でも弾けるようになるので、一種のピアノパーティと考えることもできます。このようにNTPPのPPには、ピアノパーティの理念が込められています。
しかしながら、NTMはストリートピアノがベースにあるので、NTPPは、「ノーストーキョー・パブリックピアノ」Noth Tokyo Public Pianoというのが第一義といってよいのかもしれません。なお、NTはNew Type やNaraTiveなど、上記NTMでのNTと同様の意味合いです。X(twitter)アカウントは NTMntppとなっているので、一番大まかな意味としては New Type Musicking north tokyo public pianoというようにもいえます。
Twitter.icon Instagram.icon スクエアゼット(NTM代表)・あわね そうや(NTM副代表)   (最終更新 2026.4.30)
NTMの具体的な活動については、NTM Outline(活動概略)をご覧ください!
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